第2章 薬研藤四郎
「この間見たぱれーどってヤツはまだ先なんだな」
「うん、その前にいくつかアトラクション乗っとこう」
インフォメーションのタイムスケジュールを見ながら薬研が呟くと、審神者は携帯用端末を操作する手を止めて歩き始めた。薬研はその横についていく。店の並ぶ通りを右に曲がりしばらく歩くと白い建物が見えてきた。
「薬研、入場券貸して。それと私が戻るまでここから動かないこと」
「姉貴、俺っちも一緒に行く」
主を一人にする訳にはいかない。言外にそう含ませて、アトラクションの予約券を取りに行こうとする審神者の後を追う。少し並んで審神者達の番が回ってきた。金属製の筒のようなものに入場券を差し込んで抜くのを二回繰り返すと下から時間の書かれた紙が二枚出てくる。審神者はその二枚を自分のチケットホルダーに入れ、薬研に声をかけた。
「じゃあ薬研、まずはジェットコースターからよ」
「じぇっとこーすたー?」
「すごく楽しいものってコト」
こっちだと審神者が案内した先にはドーム型の屋根の建物があった。入口と思しき所に表示されている数字を見て、審神者が嬉しそうな声を上げる。
「20分待ちだって‼︎今日は空いてるラッキー♪」
「は?20分も待つのに空いてるってどういうことだ姉貴⁈」
「ここでは10分や20分くらいなら待ってる内には入りません」
真面目な顔で360分待ちとか普通にあり得るからここは、と続ければ、薬研は軽く眩暈を覚えた。
「6時間待つとか意味がわからねぇ」
「ねー、さすがにそれは無いよね」
二人ともどこか遠いところを見ながら待機列の最後尾に向かい歩いていった。
20分後、二人はソフトクリームを食べながらベンチに座っていた。
「すげー楽しかったな今のヤツ‼︎ホントに星の海の中をすごい速さで駆け抜けてるみたいでさ、しかもどう動くのか暗くてわからないから楽しさ倍増‼︎後でまた乗ろうぜ」
薬研は初めてのジェットコースターを気に入ったようだ。背後に誉桜の幻影が見える。しかし審神者はニヤリと笑うと、おもむろに地図を広げた。