第7章 鶴丸国永
クルクル回るーーーと思えば急発進と急停止を繰り返し、不規則な動きで翻弄される。目の前で突然噴水のように水が沸き上がったり、あらぬ方向から水が飛んできたり。
「たーのしーっっ‼︎まわるまわるーっっ‼︎」
「これは、なかなか!予想外だぜ!」
「未来のマリーナ」がテーマのエリアで、二人はほぼ貸切状態のアトラクションに乗っていた。吹きっ晒しの水の上をポッドに乗ってランダムに移動するというアトラクションである。しかも運が悪いと飛んで来る水に濡れることがあるので、冷え込む冬場はさほど混まない穴場アトラクションなのだ。
「空いていたからどうかと思ったが、中々に刺激的だったな」
「まぁ、冬場は寒いからね。その代わり夏場のびしょ濡れコースは120分待ち当たり前だけど」
「ほう、びしょ濡れコースなんてものがあるのか?」
「夏限定でね。かなり容赦なく濡れるのよ」
「それは是非乗ってみたいものだな」
「鶴丸……なんかよくないこと企んでるでしょ」
唇の端だけを上げて笑みを作る鶴丸に不穏な気配を感じ先んじようとすれば、軽く笑い声を上げて逃げていく。審神者はもう鶴丸とはここには来るまい、と密かに決意したとかしないとか。時刻は間も無く正午を迎える。