第7章 鶴丸国永
「いやはや驚いたな、まさか床まで揺れるとは」
「ぶっちゃけナめてたトコあったけど、ここまで進化してるとは思ってなかった」
裏通りのベンチに陣取り、審神者と鶴丸は呆然としていた。確かこのアトラクションは全年齢対象だったはずである。だが数度のリニューアルをこなして進化したそれは、子供達は素直に喝采を送り大人達はその迫力に度肝をぬかれるという代物になっていた。4Dシアターの面目躍如である。
「ところでみなみ、あのランプの魔人とやらも付喪神なのか?」
「え、いや、うーん……付喪神……付喪神とはちょっと違う、かな?どっちかって言うと精霊に近い……と思う」
なんだつまらん、と零して鶴丸は立ち上がる。付喪神だったらどうするつもりだったのかにはツッコまず、審神者も立ち上がった。
「さて、ここで結構時間食っちゃったけど次はどこに連れて行ってもらえるのかな?」
「これくらい想定内だ、問題ないさ。でえとぷらんの仕込みは上々。次の驚きを楽しみにしていてくれ」
鶴丸はどこまでもデート設定で進めるつもりらしい。当たり前のように差し出された手を、審神者は苦笑をかみ殺しながら取った。
この施設には、いくつか「名物」と呼ばれる食べ物がある。様々な香辛料で味付けした鶏の足を、じっくり時間をかけてスモークしたもの。鶴丸と審神者が今まさにかぶりつこうとしているものも、そんな「名物」の一つだった。
「これは、なかなかに難しいな。後から後から肉汁が溢れてくる」
「それが売りだからね。上着汚さないように気をつけて」
審神者はいつの間に取り出したのか、ティッシュを数枚重ねて膝の上に置いていた。同じように数枚重ねて、鶴丸の膝の上にも置いてやる。
「おお、すまないな。助かるよ」
次々に溢れでる肉汁に手を焼きながら、鶴丸は嬉しそうだった。