第7章 鶴丸国永
入場してすぐに、ショーの抽選をしようと手にした審神者の端末を、鶴丸は取り上げた。
「ちょっと何するの、鶴丸⁈」
「今日はコレは俺が預かる。代わりに俺が案内しよう。せっかくの初でえとだ、えすこおととやらをさせてくれ」
「……は?何言ってんの?鶴丸ここ初めてでしょ?」
「なぁに、心配はいらないさ。今日の為に色々調べたからな」
どうやら携帯ばかりいじっていたのはこの施設を調査する為だったらしい。とはいえそんな付け焼き刃の知識が毎週のように通っていた年パスホルダーに敵うとは思えない。苦笑を浮かべる審神者に鶴丸は真面目な顔で言った。
「君は俺達とここに来る時いつももてなす側だろう?たまにはもてなされて欲しいんだ」
「鶴丸……」
「いかがでしょう、お嬢さん?」
またしても恭しく差し出される鶴丸の手を取って、審神者は破顔した。
「それじゃお手並み拝見と参りましょうか」
「君に最高の驚きと笑顔をもたらそう」
二人手を取り合って人混みの中に消えていった。
始めにやって来たのはアラビアの街並みを模したエリアだった。
「まずはここからだ」
「ランプの魔人のショーね。確かこの間リニューアルされたって聞いたけど」
施設開園当初から人気アトラクションである。開園当初は3Dシアターだったが何十年か前に4Dシアターに改装されて以来、定期的に内容を刷新して話題になっている。そんな人気アトラクションなだけに、既に長蛇の列が出来ていた。
「どうする鶴丸?結構待ちそうだよ?」
「構わないさ、並ぼう。待っている間は君を独り占め出来るんだからな」
イケメン以外が口にすればたちまち石でも投げられそうなセリフをサラリと宣い、鶴丸は審神者の手を引き最後尾へ並んだ。