第5章 燭台切光忠
螺旋状に続く坂道を下って行く。10分待ちの表示があったが、このアトラクションにおいてそれは実質5分待ちの意味である。そろそろ下にたどり着こうかという時に、中央を走る運河から間欠泉のように水が噴き出した。
「⁈」
油断していた訳ではないが、不意を突かれて光忠が一瞬身を固くする。それに対して審神者はのんびりとしたものだった。
「光忠緊張しすぎ。これは絶叫系じゃないから安心してよ」
「え?ああ、うん、ごめん。なんか僕カッコ悪いね」
「初めて来るんだから仕方ないよ。しかもまだウチでは誰も乗ったことないアトラクションだし。絶叫系ダメな人はどこまでもダメだって言うしさ」
「いや、そういう意味じゃなくて……ああもう君には敵わないな」
「?どうしたの光忠」
思いきりよく会話がすれ違っていることに気づかぬままアトラクションの搭乗口に着いた審神者は、光忠に軽く説明を始めた。
「これは潜水艇に乗って海底探検を楽しむアトラクションよ。って言っても本物の海底じゃなくて作り物だけどね。でもすごく綺麗だからお楽しみに〜‼︎」
「へぇ、海底探検かあ。なかなか面白そうだね」
潜水艇を操作するキャストに案内され、二人は正面の位置にある座席へと乗り込んだ。