第5章 燭台切光忠
「うーん、これは先にパス取ってからスタンバイで並んで…ってトコかなぁ」
「また君は何を見ているんだい?」
「あ、これ?アトラクションの運営状況」
携帯端末を見ながら人混みの中を器用にすり抜けていく審神者をさりげなく庇いながら、光忠も人混みをすり抜けていく。岩山に覆われたエリアを抜け貝殻の尖塔が立ち並ぶエリアの洞窟のような入口をくぐり下へと潜っていった。緩やかな坂道を下っていくと、海底王国が現れる。そこは地下に設けられたエリアでいくつかのアトラクションとプレイグラウンド、ショップとレストランで構成されている。天井から照らすライトは様々な海の生き物の影を床に映す。それは海底をイメージした色づかいと相まってこの場をとても幻想的にみせた。
「光忠、こっちこっち」
審神者に手を引かれてやってきたのは予約券の発券機だった。
「入場券ここにかざして」
言われた通りに入場券をかざすと、下から予約券が出てくる。へぇ、と光忠は目を細めた。
「これが薬研君の言ってた予約券かい?」
「そうそう。これがあると便利なのよ」
首尾よく予約券を手に入れてご機嫌な審神者は足取りも軽く歩き出す。人混みに紛れそうになる肩を、光忠は咄嗟に掴んだ。
「君はそうやってすぐにフラフラと……。迷子になったらどうするんだい?」
「誰に向かって言ってるのかな光忠君。こっちにいた頃は毎週のように通っていたのよ?迷子になる訳ないじゃない」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
これはダメかもしれないと、光忠は密かに頭を抱えた。