第5章 燭台切光忠
モノレールから降りると、そこには既に大勢の人がいた。 その半数は家族連れだが、若い男だけのグループや自分達のような男女二人連れも少なくない。皆一様に期待に溢れた笑顔を浮かべている。何気なくを装って辺りを見回していた光忠は、審神者に気づかれぬよう小さく息を吐いた。これなら大丈夫だろう。太刀である自分は、短刀達のように荷物の中に己が本体を紛れ込ませることができない。索敵も際立って得意という訳ではないし、夜目も利かない。有事の際には文字通り身体を張って主を護らねばならないが、それはどうやら杞憂に終わりそうだ。周囲の人々を見て、ほんの少しだけ緊張を解く。開門したのか動き出した人々の列に続いて、はぐれないよう審神者の肩に手を回し、ゆっくりと進んでいった。
入場と同時に携帯端末を取り出してチケットのQRコードを読み取り、何やら操作し始めた審神者を光忠はじっと見つめていた。真剣な表情でブツブツと何かを呟きながら必要事項を入力している。気になって覗き込むと、端末の画面に当選の文字が躍った。
「よっしゃ当たった‼︎やっぱり神様と来ると当選確率上がるのかしら」
「何のことだいみなみ?」
「抽選で当たらないと見れないショーがあるって言ったでしょ?その抽選が携帯端末からできるようになったからやってみたの」
「ああ、当たったんだね」
「うん。薬研の時といい、さすが神様、霊験あらたかねぇ。ご利益バッチリ」
「……それは褒めてるのかい?」
「もちろん」
真面目な顔で頷く審神者に釈然としないものを感じながら、光忠は並んで歩き始めた。