第4章 今剣
ジェットコースターからほど近い化粧室の前で審神者を待っていた今剣は、奥の建物で人々がなにやら楽しげにしているのを見つけた。詳しいことはわからないが、皆壁に向かって何かをしている。ワイワイと賑やかなそこに興味を惹かれて、戻ってきた審神者に尋ねてみた。
「あねうえさま、あそこはなにをするところなのですか?」
「んー?ああ、あそこは射的場。10発ある弾をどれだけ当てられるかを競うの。全部当てるとご褒美が貰えるの」
「しゃてきじょう……ごほうびってなんですか?」
「保安官のバッジ……みんなの安全を守る人の印が貰えるのよ。つーくんもやってみる?」
「はい‼︎やりたいです‼︎」
やる気満々な今剣を連れて入口に並ぶと、二人分の料金を支払って銃を手にする。今剣に構え方を教えながら、審神者は一発見本を見せた。
「銃はこう持って……そうそう、よーく狙ってこの引鉄を引くの。見ててね……ってあらら、外れちゃった」
「んーと、こうですね。やってみます」
審神者は外してしまったが、今剣は教えられた通りに撃ち見事的に当てた。
「うわぁ、つーくん上手い上手い!これは負けてられないなぁ」
「どっちがたくさんあてるかしょうぶです」
「負けないわよ?」
二人の真剣勝負が静かに始まった。
「つーくんすごいなぁ、全部当てるなんて」
「あねうえさまはさいしょのいっぱつがなければぜんぶあててたのにざんねんでしたね」
「うん、でも金のバッジ貰えたからラッキー」
射的場を後にした二人は、それぞれの手にバッジを持っていた。今剣は全発命中させると貰える銀のバッジ、審神者は成績用紙にluckyと書かれた者が貰える金のバッジを持っている。バッジを服に付けようとして苦戦している今剣からバッジを受け取り、自分のバッジと縦に並べてカーディガンに付けてやると、今剣は不思議そうな顔をした。
「これはあねうえさまのばっじですよ」
「これは安全を守る人の印でしょ?今日はつーくんが守ってくれる日だからね」
その印だよ、と頭を撫でて、パレードルートへと向かう。今剣はこの上なく誇らしげな顔をして胸を張ると、審神者の手をとり歩き出した。