第4章 今剣
ゆったりと周遊を楽しんだ船から降りると、運河沿いに歩を進め岩山を模したジェットコースターの前へと出る。船上から見かけた今剣が乗りたがったのだ。だがそこには結構な行列ができていた。待ち時間を示すボードは120分となっている。比較的空いている日ではあったがそこは人気アトラクション、かなりの待ち時間が発生する。ボードの前で難しい顔をする審神者を、今剣は不安そうに見つめた。
「つーくん、これ今から並ぶと2時間待たなくちゃいけないの。でも並んじゃうとお昼のパレード見れないけどどうする?」
「これにならぶとぱれーどがみれないんですか?」
「うん、今から並ぶとこれに乗れる頃にはパレード終わってるの」
今剣は悩んだ。ジェットコースターには乗りたいがパレードも見たい。パレードは今年いっぱいで内容が変わると聞いた。レア刀こそ少ないがそれなりに刀剣数のいる本丸で、今日を逃せば次はいつ連れてきてもらえるのかわからない。今剣は大いに悩んだ。目を閉じて考えると、ふと本丸で見た動画を思い出した。
あのパレードを実際にこの目で見たい。
そう願ったはずの自分を思い出し、決心した。
「あねうえさま、やっぱりぼくはぱれーどがみたいです」
「うん、そっか。じゃあ代わりに何か乗ってからパレード見に行こうか」
「はい……」
「ジェットコースターはまた今度ね」
「‼︎はい、またこんどです‼︎」
また連れてきてもらえる。一度は沈んだ心が再び沸き立つのを感じて、今剣は笑顔を取り戻した。