第4章 今剣
くるくると回る耳の大きなゾウの下に陣取りながら、買って貰ったサンデーをつつく今剣の横で審神者はインフォメーションとにらめっこをしていた。今日のスケジュールでは、夜のパレードは見ることができても、薬研と見た抽選制のショーを見ていたら確実に門限に間に合わない。ショーは先週から冬の間の期間限定ショーへと内容を変えている。出来ることなら見せてやりたいのだが、どうにも留守番の一期の笑顔(ただし目は全く笑っていない)が脳裏をよぎるのだ。大きく息を吐いて、審神者はインフォメーションを畳む。
「どうしました、あねうえさま?」
「ああ、うん、あのね?今日のスケジュールだと夜のパレード見たら帰らなくちゃいけないなぁって」
「?……それがどうかしましたか?」
「うん……それだと薬研と見たショーは見れないの。期間限定バージョンだし出来れば見たいけど門限に間に合わないから仕方ないよね」
「あねうえさまはみたいのですか?」
「うーん、私も見たいけどそれ以上につーくんに見てほしいんだよね。絶対に気に入るから」
「なら、みてかえりましょう」
「いや、それだとつーくんも一期に怒られちゃうよ?」
「ふたりでおこられればこわいのもはんぶんこです」
真面目な顔をして言うが、審神者を気遣ってのことだろう。短刀故に幼い見目をしてこそいるが、今剣は刀剣男士としては年長者だ。いざとなったら審神者に非が及ばぬようにするつもりなのだろう。それがわかっているから審神者は敢えて決断した。
「それにあんまり遅くなると風船買えなくなっちゃうからね」
だから帰ろうと言外に含ませて言うので、今剣も何も言わなかった。やがて園内にかかるBGMが止み、パレードの開始を告げるアナウンスが流れてくる。一瞬の静けさの後に、賑やかなパレードが始まった。