第3章 御手杵
秋の日は釣瓶落としとはよく言ったもので、気づけば夕焼けが空を染めていた。二人はグリーティングスペースからほど近いレストランに入り、この季節の限定メニューに舌鼓をうっていた。
「初めて食うけど美味いな、コレ」
「メキシコ料理でタコライスっていうのよ」
「え?タコ入ってるのかコレ?」
「そのタコじゃないってば。メキシコ料理にタコスっていうものがあって、その具だけをご飯の上に乗せたもののことをタコライスっていうの」
ある意味お約束なやりとりをしながらも食事は進む。御手杵は料理を気に入ったようで上機嫌だ。審神者もグラスを片手に微笑んでいる。
「まだキウイのモヒートあって良かった!やっぱ限定モノは押さえておかないとね」
「この酒もひーとっていうのか?結構美味いよな初めて飲むけど」
「いつもは日本酒ばっかりだからね。たまにはいいでしょ?こういうのも」
実年齢より幼く見えても審神者は立派に成人済みである。刀剣男士達と酒席を交えることもある。こう見えて結構な酒豪で次郎太刀の向こうを張ることもあるくらいだ。カクテルの一杯ごときで酔うことはない。だから問題は無いと判断してアルコールを頼んだのだが、それが後々吉と出るか凶と出るかこの時点では定かではない。
「で、この後どうする?」
「うーん、初っ端から門限破るのも一期が怖いしお土産買って帰ろうか」
「そうだな、あいつ怒らせると怖いしな」
「ねー、一期ってさ、その内絶対禿げるよね」
「……ああ、そうだな」
審神者と御手杵、両者の意見が一致したところで二人はレストランを後にした。