第3章 御手杵
「きゃぁぁぁーっ‼︎#&@☆*$%ーッッ‼︎」
御手杵は驚いた。自分達の順番が来たと思ったら、突然審神者が意味のわからない雄叫びを上げて探検服に身を包んだ黒ネズミに抱きついたのである。そしてそのまま何かを熱心に話し始めた。更に驚いたことに、黒ネズミは一言も言葉を発していないのに、何故か会話が成立しているのである。御手杵はただ呆然とその様を見つめるしかなかった。と、御手杵の存在に気がついた黒ネズミが審神者にちょっと待ってというジェスチャーがしながら近づいてきた。立ち尽くす御手杵の手を引いて審神者の所まで連れて行くと、二人を横にならばせた。審神者はすぐにその意図を理解すると、鞄の中からカメラを取り出しキャストに渡す。受け取ったキャストが御手杵に「彼氏さんもご一緒に」と声をかけるのを聞いて、黒ネズミは片手で審神者と、もう一方の手で御手杵と手を繋ぎポーズをとった。審神者も同じようにポーズをとっている。呆然としたままの御手杵は、キャストが写真を撮り終えてご確認くださいとカメラを返してくるところでようやく我に返った。今、キャストは何と言った。彼氏さんと呼ばれたのは気のせいではないはずだ。己が主の恋人に見えている。御手杵の見目は審神者の年頃に近い姿をしている。側から見れば恋人同士に見えるのだ。そのことが御手杵の気分をいたく高揚させた。例えそれが周囲には黒ネズミに会えて喜んでいるように見えたとしても。