第3章 御手杵
「あれ、外れても賞品貰えるんだな」
「うん、でも今日はぬいぐるみもバッジも貰えたし、御手杵のおかげだね」
ゲームコーナーの近くにあるドリンクブースで飲み物を買い、ベンチに座って戦利品を眺める。大きなアヒルのぬいぐるみと、オレンジ色のカボチャの上に乗った黒ネズミのピンバッジ。御手杵は言葉通り一発目でぬいぐるみを取り、全て外した審神者は残念賞のピンバッジを貰った。どちらもこの季節限定のデザインであった為、御手杵がぬいぐるみを取った後、審神者はわざと全て外したのだ。もっとも、狙っていても全て外れただろうが。ピンバッジを上着の襟に着け、審神者は満足気にうなづくと、ぬいぐるみを抱えて立ち上がる。御手杵も続いて立ち上がると、審神者からぬいぐるみを取り上げた。
「こいつは俺が取ったんだから俺が持つ」
「え、何⁈どうしたの急に」
「いいから持たせろ。じゃあ次行くぞ」
持ち帰り用の袋に入ったぬいぐるみをぶら下げて一人歩き出した御手杵の後を慌てて追いかける。追いついた審神者の耳に、少しはカッコつけさせろという小さな呟きが聞こえてきて、人知れず微笑んだ。
ドリンクブースから歩くこと数分、石造りの建物の前で審神者は立ち止まる。待ち時間を示すボードの前で少し何かを考えた後、御手杵の手を引いて言った。
「御手杵、次これに乗ろう」
「いいけどよ、また部屋ごと下に落ちたりしねえよな?」
「大丈夫だって。これはのんびり舟に乗って景色を見るだけのアトラクションだから」
午前中に乗ったアトラクションは御手杵にとってトラウマになりつつあるようだ。一瞬身構えたのを見て審神者は苦笑する。あまり乗り気でない御手杵の手をとって、アトラクションの入り口へと進んで行った。