第3章 御手杵
「なに難しい顔して黙ってるのよ」
順番を待つ間、黙ってしまった御手杵に審神者はポンと背中叩いて言った。御手杵は自分の眉間に皺が寄っていることにようやく気づいたようで、慌てて片手で顔を隠す。それを微笑ましく見ながら審神者は尚も話しかけた。
「で、どうしたの一体?」
「あー、いや、せっかくみなみと二人だってのに今日はいいとこなしだからなぁ」
「なんだそんなこと?だったら今から挽回すればいいじゃない」
クスクスと笑いながら、審神者は間近に迫ってきたゲームの屋台を指差す。御手杵も其方へ目を向けると、おめでとうございますという声と共に大きなぬいぐるみを渡されている子供の姿があった。
「このゲーム、奥のお皿に一つでもボールを乗せることができればあのぬいぐるみが貰えるの」
持ち帰り用の袋にぬいぐるみを入れてもらい、子供は得意げな顔をして立ち去った。その後姿を見送りながら、御手杵は審神者が言わんとしていることを察する。
「あれを取ればいいのか」
「そうそう。私、このゲーム何回やっても苦手でね。まだぬいぐるみが貰えたこと無いの」
「そういうことなら任せとけ。俺は刺すしか能が無いが絶対取ってやる」
「頼りにしてるわ」
御手杵の顔に笑みが戻ったのを見て、審神者は安心したように微笑んだ。二人の順番が回って来るまで後少しである。