第3章 御手杵
のんびりと散歩でもするかのように2人並んで歩く。ゴツゴツとした岩山に囲まれたエリアを抜けると、急に視界が開ける。左手には貝やヒトデといった海のものをモチーフにした塔のようなものが並び、右手には橋の向こうに鮮やかな青色のモザイクタイルのドーム型の屋根が見えてきた。趣きの違う2つのエリアを運河が分ける。審神者が橋の方へと足を向けると、その隣を半歩遅れて御手杵が追いかけた。
「そっちに何かあるのか?」
「うん、ちょっと欲しいものがあってね。御手杵にも協力してもらうからよろしくね」
やがて橋を渡ると、美しい青のモザイクタイルが映える異国情緒溢れる門が現れた。門の中には噴水があり、それに沿うように階段が続く。階段を降りるとそこにはアラビアの街並みが再現されていた。
「こっちよ、御手杵」
「ん?どこ行くんだみなみ」
足を止めて辺りを見回していた御手杵は、細い路地へと向かう審神者に声をかけられ慌てて後に続く。裏通りに行列ができていた。審神者はその行列を辿り最後尾まで行くと列の整理をしているキャストに尋ねた。
「今からだと何分待ちですか?」
「30分待ちですね。並ばれますか?」
「はい。良かった、今日は空いてる」
「そうですね。あ、こちらに寄って並んでください」
指示された通りに審神者が並ぶと、御手杵もそれに倣った。既視感が彼を包む。もしやまた何かのショーを待っているのかとも思ったが、それにしては行列の進み具合が早い。少し声を潜めて審神者へと尋ねてみると、あっけなく答えは返ってきた。
「なあ、今度は何なんだ?」
「ん?これはゲームコーナーの待機列。3回球を投げて一番奥のお皿に乗せたら勝ちっていう簡単なゲーム」
一瞬拍子抜けするものの、審神者の様子からして何かあるのだろう。御手杵は黙って順番が来るのを待った。