第3章 御手杵
「御手杵?」
審神者に肩を叩かれて、御手杵は夢から醒めたように居住まいを正した。圧巻、という言葉以外思いつかない。どこまでも洗練されたショーに引き込まれていた己に気づくと、審神者の肩をがしりと掴む。
「すげえ……すげえな今の‼︎ここじゃ毎日こんなすげえのやってんのか⁈」
「痛い痛い離して御手杵。とりあえずここから退かないといけないから立って」
刀剣男士に手加減無しで掴まれた肩が悲鳴をあげる。なんとか宥めて立ち上がると、レジャーシートをしまい、近くの建物を指差した。
「少し遅いけどお昼にしましょう?話はその時聞くから」
「お、おう。そういや腹減ったなぁ」
苦笑しながら御手杵の手を引き、一軒のレストランへと向かった。そこはバフェテリアサービスのレストランで、特にパスタは種類も豊富で評判の良い店だ。慣れた様子でテキパキと注文していく審神者と、見よう見真似でなんとか注文できた御手杵は会計を済ませ席に着いた。ちなみに審神者は海老と的鯛のラザニアとデザート、御手杵は真蛸のアラビアータのパスタとサラダとパンを選んだ。
「起きてて正解だったでしょ?」
「あー、なんだ、その、ホントに済まなかった」
揶揄うように言う審神者に、御手杵は素直に頭を下げた。先程のショーを見て、朝見たショーで居眠りをしたのがどれほど惜しいことをしたのかようやくわかったようだ。神妙な面持ちで審神者を見つめている。審神者は少し困ったように笑うと、わかればいいの、と呟いた。
「さ、せっかくの料理が冷めちゃうから早く食べましょう」
いただきます、と挨拶をしてそれぞれが食事を始める。先程のショーの感想を言い合いながら、和やかに遅めの昼食を楽しんだ。