第2章 薬研藤四郎
トランプのモチーフが楽しげに飾られたレストランで早めの夕食を取るべく薬研と審神者は列に並んでいた。このレストランは盆を持ち自分の好きなものを注文するバフェテリアサービスのレストランなので、会計を済ませるまでは列に並んで待たねばならない。薬研はハンバーグとサラダとスープを、審神者はメカジキのグリルとサラダとデザートとドリンクを頼んで会計を待っている。その間にも、先程乗ったアトラクションの話に花が咲いていた。
「いやぁ久々に乗ったけど、やっぱ楽しいわアレは」
「さすが三代まうんてん?の一角なだけはあるよな。すげー楽しかった‼︎」
「薬研三代じゃなくて三大だってば」
「あ?細けぇこたぁいいじゃねーか姉貴、楽しかったんだから」
「ハハッ、それもそうだね」
話し込んでいる内に順番が来て会計を済ますと係員に案内され席に着く。いただきます、と挨拶して食事を始める。ハンバーグを一口頬張ると、薬研は目を輝かせた。
「はんばーぐにちーずって合うんだな‼︎今度やってみようぜ、姉貴‼︎」
「チーズは上にかけても美味しいけど、中に入れても美味しいのよね。作る時面倒だけど」
「俺っちも手伝うからさ、作る時」
「薬研はいつも手伝ってくれるじゃない」
薬研は余程気に入ったのか、他の兄弟達も手伝わせると張り切っている。普段、短刀達の中でも格段に落ち着いている薬研が見目相応にはしゃいでいるのを見て、審神者は帰ったら挽肉とチーズを大量発注しようと心に決めた。
食事を終えると、二人は土産物屋に来ていた。店が混み合う前に買い物を済ませておいた方がいいと審神者が言うので、薬研は言われるがまま土産物屋に足を踏み入れた。そこはいつも行く万屋よりも何倍も広く、色とりどりの缶や箱、袋に入った菓子が売られている。好きなものを買っていいと言われて、薬研は悩んだ。本丸にいる全員に配るなら、この箱入の煎餅が数として丁度良い。だがこちらの缶は前田と五虎退が気に入っているクッキーの詰め合わせだ。また、あちらにある飴の入った小さな缶は乱の好きそうな装飾が施されている。その近くには一期が先日初めて食べて感動していたチョコレートがあった。悩むこと30分。結局箱入の煎餅とチョコレートを買った薬研はものすごく疲れていた。