第2章 薬研藤四郎
パレードが終了すると、二人は朝予約券を取ったアトラクションまで戻ってきた。薬研は渡された予約券を不思議そうに見ながら審神者に問う。
「なぁ姉貴、これがあると何か違うのか?」
「この予約券があると待ち時間が少なくなるの」
「へぇ、すごいなこれ。何にでも使えるのか?」
「特定のアトラクションにしか使えません」
「じゃあこれは今から乗るの専用ってことか」
「ご名答。これのおかげで100分待ちが10分かからずに乗れるの」
入口の係員に見せると別の通路を案内される。そのまま進むと中程にまた係員がいて、予約券を渡す。そこから中は、なるほど10分もかからずに順番が回ってきた。
「この電灯で出てくる物の怪の被ってる帽子に付いてる紋を照らすの。沢山照らした方が勝ちっていうゲームよ」
「なら姉貴には絶対負けらんねーな」
「毎週のように通ってた人間をなめてもらっちゃ困る」
「索敵だったら負けねーぜ?」
「こちとらどこに何がいるか暗記済みよ」
ゴンドラに乗りライトを手に取るとお互いに顔を見合わせる。二人共不敵な笑顔を見せると、正面を見据えた。
「「勝負だ‼︎」」
「いやー、さすが薬研索敵と機動ハンパないわ」
「姉貴だって全部暗記済みなだけあったぜ」
お互いの健闘を称えあう姿がそこにはあった。チュロスをかじりながらベンチに座る二人には、充実感が溢れていた。元々このアトラクションは勝負をするようなアトラクションではない。が、そこにはあえて気づかないふりをして充実感を楽しんでいた。
「さてと、それじゃそろそろ抽選しに行こうか」
「抽選って何をだ?」
「夜のパレードの他に夜しかやらないショーがあるのよ。抽選に当たると特等席で見ることができるの」
「へぇ、そんなのもあるんだな。抽選は今から始まるのか?」
「開園してからずっとやってるけどね、当たりやすい時間帯ってのがあるのよ」
「……姉貴今すげー悪い顔してっぞ」
ま、気にするなと薬研の肩を叩きながら審神者は立ち上がる。続いて薬研も立ち上がると、二人並んで抽選会場へと向かった。