第28章 想い
とんっ
その時、ついに
その男の背に壁がつき
「ひっ」
恐怖と共に顔を引きつらせる。
その中、迅から突きつけられる風刃に顔を歪めながらも
即座に壁につけられているボタンへと手を伸ばす。
しかし、その直後にその手を風刃で斬られた。
「ぎゃああああ!!;」
遊真「!迅さん」
切り落とされた手に対し
驚きと共に迅に目を向けると…
迅「大丈夫。
こいつは、トリオン体だよ」
真剣な表情と共に、男を睨み据えたまま
風刃をつきつけ続けていた…
緑川(迅さん…怒ってる?)
いつもとは違うことに狼狽しながらも思う中…
低い声が場内に響く
迅「あいつの過去を
勝手に読み込んだらしいが…
どうだった?
あいつの乗り越えてきた傷は…
あいつが苦しんできたものは、そんな程度のものじゃないはずだ…
お前が勝手に思ってたものも
勝手に乗り越えるはずのないと決めつけていたものも
あいつらの前では、全くの別だ!!
恵土は…
いつでも、そう在り続けていた…
(満面の笑みで手を差し伸べる恵土が脳裏に浮かぶ)
そして俺たちもまた
恵土が生き永らえられるように尽力し続ける!!
それが、あいつにできる
俺たちなりの恩返しだと思っているからだ!!!!
勝手に決めつけるな。
勝手に殺すな!
あいつに手を出せば、お前を殺してでも助け出すぞ!!!!!(真剣&睨」
風刃を首へ押し付けながら
怒りをあらわに叫んでいた…
遊真「おお…キレてる」
緑川「初めて見た…」
思わず目を向けながら呟かれる中
黒い球体の中では、一つの鼓動が響いていた…
それは、一人の人の心臓の鼓動…
心臓が突き刺され、迅が一時返したトリガーによって回復し
それから気を失っていた恵土だったが
その恵土もまた、秀次と同様に
苦しみ続けられていた過去を、見せられていたのだった…