第26章 映画
迅の想いを受け、恵土が満面の笑みを浮かべる中…
ふと、呟かれた…
恵土「そういや…
「助けてっ」って声がしたんだよなあ…」
『?』
「何が?」
「誰の?」
太陽の光が差し込む大きな部屋の中
口々に呟かれる問いかけに対し…
恵土「…昔、ひどい目にあわされてた時の話だ…
殺さないと…
自分を殺さないと…
そうじゃないと、周りに迷惑がかかる…
辛い思いをさせてしまう…
殺せ、殺せ、殺せって…
殴られたり、蹴られたり
そうじゃない箇所なんてないぐらいされて
ひどい目に遭わされ続けてた時に思うしかなかった…
そんな中、呟かれたように
聞こえ出したそれは、自分の声だった…
そんな自分を心の奥深くに閉じ込めて蓋して
護ることしか出来なかった…
いつか、小さい時みたいに
そんな風に想うこともなく、笑って過ごす日々を望んでた…
今みたいに…
ひどい目に遭わされず、平和に過ごせる日々なんて
想像さえもできなかった…
誰も、受け入れちゃくれなかったから…
誰も、望んではくれなかったから…余計に…」
俯きながら自嘲気味に微笑んで言う中、押し黙る面々…
恵土「…理解されない、好きに言われる
勝手に決めつけられる、聴こうともしないまま…
居場所も何もない中で…
拒絶されるわ、面白がって傷付けられて
修復していくのを笑いながら見られたり
殺されたことだってあった…
それでも、始祖神の力を使い切った後って感じじゃなかったから…
だから、あの大規模侵攻の時みたく死に掛けたりはしなかった…
こんな力のせいで死ねないのなら…
こんな力があるせいで皆が死んだなら…
何度も考えたけれど…
助けるためには、どうしても強さが必要だった……
でも、姉ちゃんや
父上と母上を含めた皆を失った時…
その考えは一変した…
間に合わなきゃ、意味がないんだ…
助けられるその時に、傍に居なければ
どれだけ強くたって護り抜けない…
誰よりも早く駆けつけなければ
動かなければ、目の前で殺されるばっかになる…
あの時から…
そこで、自分の中の生きたいって気持ちが死んだ」