第25章 傀儡(かいらい)
乗っ取られて操られる前、恵土の意識は…
ある夢を見ていた…
その内、あるものが見えてきた…
自分が近付いてくる人を切り裂き続ける姿だった…
「あっはっはっはっはっはっはっ!!
はっはっはっはっはっはっはっ!!(微笑」
凶器に満ちた微笑で、次々に切り裂き続ける…
その切り裂いた人たちは…
全て…親しくなった人たちだった…
村人たち
幼い頃に渡り歩いた先で、優しくしてくれた近界民
瞳が揺れる中
「こうやっているのも同じだ!
そうだろ?…
お前を慕った奴等は、全員殺されて死んでいった!!
お前が全員を切り殺したとしても全く同じだ!!」
そう叫び出す、もう一つの己の姿…
それに、何も言い返せずにいた…
そして、一つの場面が思い浮かぶ。
壊され、燃やされ、跡形もなお村に一人たたずむ中
その地面へひざまずいて
「私がいけないんだ(震え)
私が死んでさえいれば…
最初からいなかったら…(ぽとっぽとっ」
拳を握り締めながら、涙を零し落とす中
「誰だってそう言う!;
私なんかが生まれていなかったら!!
最初からこんなことにはならなかった!!!
死ぬ人たちは
もっと減っていたはずだったんだ!!!!
私なんかが生きてちゃいけなかった!!!!!;;」
張り裂けるような声、絞り出されて空虚な大気へと響く
それから場面は変わり、近界
「…あいつらの、言った通りだ…
消えてしまえば、よかったのに…
そうしていれば
関わった人たちの哀しみも、少しは減ったはずなのに…」
同じように自責の念にとらわれ、やるせなさに包まれ
己の大事さなど、目に入らなくなっていた。
己がどうなろうとも、どうでもよく感じていた…
尊い存在に、自分は含まれていない…
こんなにも穢れ(けがれ)、汚れはてた自分など
存在する価値さえもないと、感じていたから…