第24章 迅悠一
殺された苦しみは、殺されたものにしか解らない。
受け入れられない苦しみだってのも解ってる。
それでも…
生きなきゃ始まらないだろ…
人として生きるってのは
その苦しみや痛みと向き合って、それでも立ち向かい続けることだ。
乗り越えても乗り越えても
また、傷はうずいては飲み込まれていきそうにもなる。
実際、私は何度も飲み込まれかかってる。
それでも…その度に思うんだ…
自分が要因で、誰かが死んで殺されて…
同じ思いをする人たちを増やすことを、喜ぶのかって…
どんなに辛くても悲しくても、やるせなくっても…(涙目)
その人たちが私に遺してくれた想いは変わらない…
愛してくれたという事実も変わらない…
なら、信じるしかねえだろ。
どんな目に遭ったとしても、護り抜くって…
その道を、向けてくれた心を…
無下に引き裂いたり、無視したりしてはいけない。
少なくとも、共に過ごした日々は特に…
それで復讐して、実現しまくったとして…
後に残るのは、人の躯と
その傍らで嘆き苦しみ、痛みにもがいては悲しむ人々だけだ…
その人たちが、本来遺すはずだった子供も
未来も、その平和だったはずの日々も…全部だ…
殺すってのは、全部を奪うってことだ。
これからさき在り得たはずの何かまで、全部…
確かに人は醜い…
生き残るために躍起になって
トリオンを集めるために、人を殺してでも奪う近界民だっている。
けれど…
全員が全員じゃないってのは、もう近界を渡り歩いて解ってる。
一人一人が違って、国々でもいろいろと変わってくる…
憎むべきものが何なのか解らなくなったりもする。
殺してきた人が憎い。奪った人が憎い。
トリオン兵を送って殺しをさせて何とも思わない人が憎い…
言いあげていけばきりがねえ。
それでも…
私なりに考えて、答えはもう出たんだ…」