第24章 迅悠一
時はさかのぼり…
夜の部が始まる、よりも前…
日が沈み、5時を過ぎた頃…
迅は、ボーダーの屋上で物思いにふけっていた…
迅「雨、か…
ちょうど、こんな時だったな…
恵土先輩に助けられたのは…
あれから…もう、6年か…」
小さい時、なぜか向き合った人の
少し先の未来が、生まれながらに見えていた…
ある日、6歳の時だったか…
父親に、事故に遭う未来が見えた…
俺は必死に止めようとしてけれど…
結果、それはかなわずに死んでしまった……
その後、また未来が見えるようになったのは…
ちょうど今から、6年前の時だった……
母親が死ぬ未来が見えて、必死に何とかしようとした…
それでも、近界民の出現は変わらなくって…
護り抜こうと必死に動いても
結局は、母親が目の前で殺される結果となった…
「悠一!!」
どんっ!!!(迅を突き飛ばす)
ずしゃぁ!!!(トリオン兵に切り裂かれる)
びしゃーん!!
近くで落雷が起こる中、その光で見えたのは…
俺を庇った母親が、切り裂かれて絶命した姿だった…
迅「母…さん」
まだ幼かった俺は…
それが、信じられなかった…
必死に揺するしか、出来なかった…
そんな中、もう一体の近界民が来て…
迅「来るな!!来るなあああ!!!!」
そう叫んでも、近付く近界民に
思わず、俺は目を瞑りながら母さんを抱き締めた。
これ以上、母さんを傷付けさせたくはなかった…
ずばぁん!!!
そんな折…
一つの音が聞こえた…
ふと目を開けると
俺の後ろから飛び上がった一人の人間が
近界民に向けて、上段から切り裂いた所だった…
恵土「大丈夫か!!??」
トリオン兵の上に乗った状態で尋ねられた
それが
俺と恵土との出会いだった…
迅「母さんを!!母さんを助けて!!」
そう涙ながらに叫ぶ俺を見て、すぐ駆けつけて手を触れた
だが…
その後、苦しそうな顔をしながら首を横に振った
迅「何で!」
恵土「…ごめん。どうしても治せない…
…お前の母親は……もう、死んでいるんだ」
その三日後、葬式が開かれた。
友人やら親戚やらの家に引き取られるかなどの話になるが
遺産が目的だのなんだのと
信じられないようなものばかりが目の前に広がっていた…