第22章 伏魔(ふくま)
2「全身のあらゆる箇所でやってみたが
結局の所、一番回復が遅い場所と言う者はなかったな」
1「全部が全部早いってことだろ?
なら、その分試作品だって取り出しにくいってもんだ」
恵土(やばい…
トリオンが尽きた…
そのせいでか、生身に戻っちまった…
全く、自分自身にはトリオンを感じない…
今の内に分離して…)
うすぼんやりとした意識の中で
辛うじて、トリオンと生身を普通の人間と同様に分離させる…
すると、それが終わった折に
どずっ!!
恵土「ぎゃああああああああああああ!!!!!;」
1「お。生身の感触だ」
2「慎重に扱えよ?」
1「解ってるって。狙いは心臓だろ?
ってか一々うるせえな、両方共に」
悲鳴を上げ続ける中、黒い物質を体内にいれられ…
その中、最後に残っていたトリオンが傷を瞬時に回復させた…
恵土「ぜえ…ぜえ…;」
1「じゃあ、睡眠ガスでもかけるか?」
2「ああ。今なら効くだろ」
そしてマスクを強引に押し当てる中…
恵土「…あり…がとう」
1&2『?』
恵土「…こうするのが、私で…
私にしてくれて…私以外にしないでくれて…
本当に、ありがとう^^」
苦し気に息を荒らしながらも
満面の笑みを浮かべながら言う恵土に対し
1「はっ。いかれてるな、やっぱり」
2「嬉しそうに言うことでもないだろうに…
あんな目に遭い続けておいて、どういうつもりだ?
まあ、その方が助かるわけだが…」
1「あ?何でだよ」
2「それだけ他者を思いやり
自分が味わった方がマシだと思っている分
逃げられる確率は大幅に減る。
第一、回復速度もまた尋常のそれではない。
弱っているとしても、常に確保し続けておくに越したことはないだろう?
トリオンの供給源になるのだからな」
1「お前…やっぱずるがしこいな。
このまま帰った方がいいんじゃないのか?
空間ので繋げられて取り返されれば水の泡だぞ?」
2「解析したデータは既に送った。
今から帰ろうが帰らまいが
どちらにせよ、役割は果たされたも同然だ…
この世で唯一存在する、トリオン体と生身の融合体…
その生態や回復などの影響や、今までの中でもどのような違いが出るか…
それを調べるのが我々の役割であり
そのトリオンを確保することもまた、遠征の目的でもある」