第4章 過去
泣きたいだけ泣きじゃくってから…
下ろしてもらい
恵土は、あることに気付いた…
日本刀から手を離していたことではなく…
その手が、村人たちの血で染まっていたことに…
トリオン兵が纏っていた返り血を
かぶっていることに気付けぬほど
目の前のトリオン兵を倒すことのみに集中し切っていた…
しかし…
それにより
恵土「震え)私が、奪ったんだ…」
か細く、弱々しい声が
両手を見つめながら震え、絞り出すかのように出す恵土…
その声が、静かになった現場に響いた
恵土「父上も…母上も…祖父上も祖母上も…
皆…私が、殺したんだ…;;(ぼろぼろ)
私が殺したんだ!;;」
その手で拳を握り締めながら、地面を叩いて涙を零す…
ようやく現実と向き合える時間が出来た…
しかし…
それは、あまりにも過酷なものだった…
ボーダーが、恵土を保護してから3日目…
有吾「あれから、恵土の調子はどうだ?」
城戸「食べ物も受け付けずに、閉じこもっている」
そこには、両膝を抱えながら
タオルを肩からかけたまま、暗い表情をした恵土がいた…
有吾「ん~。
おそらく、20日から何も食べてないはずなんだがな」
城戸「あんなことがあったんだ。
食べ物ものどを通らないんだろう」
有吾「しかし、食べなければ
気だけじゃなく、体まで滅入ってしまうだろ?」
そんな最中だった…
「大変です!
恵土が抜けだしました!!;」
城戸「なんだと!?」
有吾「落ち着け…
行先は、もう見当がついている。
それと…
紅蓮とソフィアの子、恵土は
俺に任せてくれないか?」
城戸「何を藪から棒に」
有吾「頼む」
そう頼み込む眼は
とても真っ直ぐで、断れるものではなかった…
城戸「……好きにしろ」
有吾「ああ。恩に着る」
そう言ってから、走っていった…
一番、会いたがっていた者がいたはずの
ある場所へ…