第4章 過去
恵土「ぐううううう!!
うあああああああ!!」
じたばた尋常じゃないほど暴れ続ける…
そんな恵土に対し…
有吾「…もう、大丈夫だ。
俺たちは、お前の父親と母親の友達だ。
助けが間に合わなくて、すまなかった」
そう言いながら頭を撫でるも
それはやまず
恵土「ぐううううううっ!!がるうううううう!!」
がぶぅっ!!!
全力で噛み付いていた…
やらなければやられる…
その日々が、攻撃しなければ殺されると
体に染みつかせてしまっていた…
しかし…
トリオンが噴出していく中…
有吾「…本当に、すまなかった…(ぽとっ」
一つの雫が、恵土へかかった…
恵土「?」
怪訝に思い、顔を上げると…
涙を零しながら、その背を強く抱き締める有吾がいた…
有吾「辛い思いをさせてしまったな…
本当に…本当に、悪かった…すまない…
何度言っても、足りることじゃない…
だが…
これだけは、解って欲しい…
お前を傷付けるものは、もういない…
近界民(ネイバー)は、もうここにはいないんだ…
もう、日本刀を下ろしていい…
戦わなくていい…
安心して、いいんだ…」
恵土「…」
その言葉に、見開かれたままだった眼が
普段通りの大きさに戻り、焦げ茶色の光を宿す…
恵土「ホン…ト?」
有吾「ああ」
恵土「もう…振らなくていいの?」
有吾「頷く)ああ」
何度も頷きながら、その頭を涙ながらに撫でる
恵土「…そ…っか…
…うっ;…あっ;;
うあああああああああっ;;;」
その温かさに、思わず涙を零れ落ちていく
あの時、泣きたかった分まで泣いて…
気付けば、日本刀から手を離していた…
その日本刀には、鍔に近い側から
左手の手形と、右手の手形が未だに残っている…
返り血によってつけられたものが…