第19章 劇(退院祝い)
ボーダー基地、本部
そのある一室で、劇が開催されようとしていた…
が、その前に二人の言う
鬼怒田さんに聴いたことについて話してみると…
鬼怒田「当時、生まれながらにして
恵土は、特別な力を有していた…
というのも…
内面の考えや心の声など全てが聴こえ
抱いている印象、拒絶かなども感じ
意識すれば可視化することも可能。
その上、感情の変化もまた目に映って見えていた。
その元来生まれ持ったサイドエフェクトによって
人の強さ・実力まで見抜け
その人にあった戦術も、今の戦術も
これからの動き、過去の経験なども全てわかる。
「ねえ。本気じゃないけれど、このままだと3-2で負けるよ?」
「…負けるよ、確実に」
「あんた強いね。村で3番目だ」
そして、それらはすべて当たっていた。
最初こそ、凄いと何だとの口では言いながら
裏では「何だこいつ」「気味が悪い」などと思われ
どす黒い何かが絶えず、目に映るようになっていたという…
それだから、誰にも言えなくなってしまった…
どうしても惜しいと感じるほど
見込みがある人間にだけ助言するようにしていたな…
見たくないもの、聴きたくないもの、感じたくないもの…
それらは関係なく、恵土の中へ流れ込んでいた…
その人の苦悩から今に至る経緯や過去まで
向き合っただけで全て悟り、その闇まで全部が押し付けられていく…
それでいながら
それを割り切って、今を生きるように諭された。
そのもっていた目から、戦いの道に誘われ
応じて参加したわけだが、全部蹴散らしていた。
体の使い方、力の伝え方、
攻撃に適した適確なタイミング…
それらも全て、生まれ持ったが故か完璧に出来ていた。
その後、護りたいと決めた。
だが姉を失い、自責の念にさいなまれた恵土は
脳が処理しなくとも
素早く体が自然と対処して動くほどの実力を身に付けた。
脳は戦術、身体は反射的に
攻撃を防ぐと言ったように役割分担することに成功してな。
もともと、村で一番強かった恵土だったが
その時点において、誰にも負けないほど強くなった…」