第16章 入院生活
恵土「…」
そんな過去が明かされながらも、うつむいたまま固まっていた。
何も言えず…自分を愛することなんて出来ないと思ったまま…
恵土(やっぱり…自分には)
目を瞑った、その時…
遊真「…」
ぎゅうっ
恵土「!」
抱き締められた…
遊真「教えてくれただろ?
自分を大事にしてもいいって。
その代わりは、どこにもいないって…
だから…
いつもみたいに、少しくらいわがままを言ったっていい。
振り回したっていい。
少しでいいから…
相手を大事にするぐらい、自分も大事にしろ。
そうじゃないと、いつか本当に潰れるぞ」
恵土「…潰れてもいい。消えてもいい。死んだ方がいい。
そうとしか思えなくなってた…
それ以外、自分には抱けなくなってた……
それでも…
それは、お前たちからしたら違うし…
嫌なんだよな?」
遊真「頷く)当たり前」
その問いかけに皆が皆一様に頷いていた。
恵土「…気付いていても、無理なんだよ。
本当に難しいんだ…」
遊真「村人の皆を、お前は愛していたんだろ?
だったら、それを自分に向ければいいんだ。
村人の皆が愛してくれた自分を、それごと愛すればいい…
それまでに自分に抱いた、憎しみも罪悪感も許せなさも全部…
村人たちが
お前の両親が、受け止めて受け入れてくれたように
愛してくれたように…
お前もまた、それごと愛すればいい…
それがあったからこその今、なんだろ?
だったら…
憎しみも苦しみも全部さらけ出していい…
それごと全部、お前で
そのお前を、愛している者がここに居るんだ。
だから…
他でもない恵土を、愛してくれ」
恵土「っ…ぅっ…(涙」
そう言いながら抱き締める遊真に
なぜか、無性に涙がこぼれ出た…
そして…少しだけ、気持ちが楽になると同時に
嗚咽と共に、呼吸があれる…
恵土「うっ;うあああああああああ!;」
感情と共に吐露する涙
遊真「よしよし(なでなで」
すがりつく恵土の頭を撫でる遊真…
同様に、少しでも安心させようと
そっと撫でだし、寄り添おうとする周囲の人たち…
そして…長年に渡り、許せずにいた自分を
少しだけ、許せるような気がした…
(11月6日AM4:23更新、429~434(6ページ))