第16章 入院生活
それが…
一日の内に、全て消え去った…
雨の降る中、必死に走り回って確かめた…
生き残ってる人がいないか…
想い出のかけらでも、残っていないか……
残るものは、一つとしてなかった…
そして…
母上が殺された場面から解ったことは……
自分が要因となっていた。
自分の持つ、祠で宿したトリオンを…
もともと
生まれ持っていたトリオンが、無駄に凄かったらしい。
その時に持ち合わせていたサイドエフェクトで
トリオンを自在に操れ、扱いこなせていた。
それで、予言通り
そういう人だけが祠に入る事を許されていたため
6歳になった時、入るように言われた。
すると…
そこで待っていたのは…
私にしか見えない、白い狼だった…
そして…力を得た…
万物創造を可能とするほどの濃密なトリオンを…
元々の性質が、万物のもととなることを知って…
それでも…結局は、変わらなかった…
5歳の時、姉が護ろうと動く中
自分だけが動けなかった…
7歳の時、祖父母が事故で死んだ時も…
傷を回復させに駆けつけるのが遅かったせいで死んだ…
それから…8歳の誕生日で全てを失って…
父上の兄、有吾に助けられて近界に行って…
それから半年後、8歳半から11歳4か月まで
1人で過ごしていった
それでもまた…
その人たちからすれば、近界民とのことで
拒絶や隔壁、激しい差別を受け続けてきた…
どこをどう行けば、元の世界に戻れるかもわからない。
それでも…歩き続けた…
存在を否定されながら…
その愚痴も、苦しみも話す相手もいない中…
たった一人で、耐え続けていくしかなかった…
話すことで、辛い顔をする人を見たくはなかったから…
自分なんか、壊れてしまえばいい…
受け入れてくれた近界民でさえも、護れない自分なんて…
そう思うしか、なかった…
そうして生き永らえてきた…