第16章 入院生活
『人に向けてばかりの分を、お前にも向けてやれ』
その言葉は
今まで、自分に向けられなかったものを向けるきっかけとなるのだろうか…
恵土「…」
そんな折、自らの両手を見つめる…
8歳のあの運命の日から、全てが終わった後…
トリオン兵がつけていた返り血を、斬ったことで浴びた
それにより、親しい者の死を
超感覚を通じて、殺された場面までリアルに感じた。
そして…
自分が殺したのだと…
その死んでいった時の想いも、解っていても…
自分自身を、憎まずにはいられなかった…
恵土「許せる…わけ…ないだろ…(うつむく&歯を食い縛る)
あんな思い、させといて…(震え&涙」
両の眼から涙が零れ落ちていく…
自分なんかは、その村人たちからすれば
ちっぽけな存在だと、感じているように……
遊真「…」
ぱぁん!!
その直後、右手で恵土の左頬を叩いた。
恵土「!…」
遊真「…目、覚めたか?
…どっちにしろ、時間は止まらない。
俺は、恵土のおかげで
親父がどう思ってたのかも知れたし、救われた。
なら…今度は…
それを自分自身にも向けてみろよ。
今まで、人を救おうと躍起になってた分
自分にそれを向けろ。
そうじゃないと…
何のために、その過去があったのか解らないだろ?」
恵土「!…」
その後、うつむきながら思い出し、苦しそうな表情となる。
それと共に、右拳を震わせながら握り締めていたが…
突如、ふっと力が抜けた…
恵土「…こうさせるために、そうしたんじゃないって…
解ってるのにな……
あの日には、もう帰れないことも…
皆とのあの日々は、もう二度と過ごせないことも…
解ってた…本当は……
逆にそれで、見てたら苦しいってことも……
でも…しょうがねぇだろ……
私にとっては…
それが全てだったんだ……」