第2章 田中恵土
恵土「でも…何でかな…
あいつらと居る時は、自然と笑顔が出たんだ…
笑えて…楽しかった…
なのに…
普段では、出来ないようになっちまった…
感情ってもんを押し殺さないと、やってけなくって…
生きていくためには、それを殺さないとって…
自分は生きてちゃいけない存在だからって…
実際、自分も思ってたんだ…
両親を死んだのは、自分自身がいたからだ…
村に居た…祖父母も、親戚も、友達も、動物も…
皆…みんな、山に行ってる間に殺されてた…;;
誕生日プレゼントでお祝いするからって…
だから
5時45分の日の入りまで、山に居て待ってて欲しいって…
でも…5時半の時に見えたんだ…煙が…
そして、そっちの方の山に居る村の方から
野生動物たちが、凄い勢いで走って逃げて行ってた…
前兆はあったんだ…
その前から、動物たちが怯えてたから……
それで、動物は止めようとするけど
たった一人の、大事な皆なんだって…必死に駆けつけた……
その頃には……
もう、遅かったんだ…っ…
遅かったんだ…何もかもが…っ!…
目に映ったのは…
血と、村の皆のシガイだった…
どこを見渡しても、瓦礫だらけ……
村の面影なんて、一つもない……
誰も、否定する者も肯定する者もいない…
でも、闘うしかなかった…
襲い掛かってくる、その血でまみれたトリオン兵と……
その、胸の奥に今もうずき続ける感情と…」
遊真「…」
黙ったまま、聞き入っている
恵土「…でもさ、辛いんだ。
辛いはずなのに、涙が出ない…出せなくなったんだ……
あの日、あの瞬間から……」
そんな中、雨が降っていた…
泣きたくても泣けない…
傷は消えず、今も曇り続け
過去に流したかった涙が、殺した涙が出ようとしている
それを殺そうとする感情と
泣きたいと思う感情とが、ぶつかり合いながら…
そんな、大荒れな心情を表すかのように……