第10章 大晦日&正月
遊真「それが…
たとえ、恵土の大事な人たちを殺した奴等だったとしてもか?」
恵土「うん」
遊真「…何で、そうできるんだ?」
恵土「その闇に、ずっと飲み込まれ続けて
それでも、必死に生きてきたから…
その苦しみも哀しみもよく解る…
ずっと、一人で…
悲しんで苦しんで、それでも支えようとする人もいない。
寄り添おうとしてくれる人もいない…
ずっと孤立したままで一人っきり…
それで苦しんでようが悲しんでいようが
解ろうともしなければ関わろうともしない…
泣いてるのを見ても
自分たちさえ楽しくて笑っていられりゃいいって奴等ばっかだった…
だからさ…
どうしたって、じっとしてなんかいられないんだ…
たとえ敵でも味方でも…
人が人であることには違いはない。
悩みをそれぞれ抱いて
それでも聴こうとする人がいないのなら
間違った方向へ行かないようにしようとする人がいないのなら…
そいつを助け出したい。
遠くない未来、「悪い奴」だとか
そういうのを言われないようにするために
それで傷付いて、涙を流す未来から護り抜きたい…
そう思って…
それを実現するには力が必要だから
ずっと…必死に修業してきたんだ。
それでもさ…
全部、失っちまった…居場所でさえも……
その時…
頭の中が、真っ白になった…
赤で染まる景色に…
知っていたはずの建物などの景色が
瓦礫だらけで、血まみれのよく知る人たちの死体だらけで…
それまでにかけてきた日々は何だったんだ…
護るために、必死に身に付けてきたものは…
その意味さえも解らなくなった…
存在している理由さえも解らず
ただただ拒否されて、否定されて…
そんな自分には…
自分を責めて、否定して、拒否するしかなかった…
何もいらないから、返ってきて欲しかった
どれだけ泣いても
泣き叫んでも、何も変わらない…
周りの人は、それを見て放置するだけ…
自分ではないから、親しい人ではないから…
その枠組みで、好きに行動して
それを見ても、ほおっておけるような人間ばかりだった…
それを経験して、思ったことがある…」