第10章 大晦日&正月
その後、帰り道で二人っきりの時…
遊真「…ずっと、近界民には
奪われ続けていたのに…
何で、そんな風に笑って
受け入れられるんだ?」
恵土「?そりゃあ…全員が全員じゃないからだよ。
一人一人、性格も違えば
価値観も考え方も生き方も変わってくる…
許容範囲も変われば、主義も違う…
世界は世界を中心に回ってる。
私なんかを中心に回ってはくれないものだ。
第一、私にも
寄り添おうとしてくれる人がいた…
表とか、一部分しか見ない人たちは
おべっかだとか、好かれようとしているだとか
色々と好き勝手に言われて
悪い噂として、周囲に拡散させてへらへら笑って…
それを言われたものの気になろうともしない
それで苦しんで悲しんで…
それに振り回される人だっている
それを真に受けて
思い悩み続けて、自殺する人もいる。
その気持ちが解るから、自主的にやめようとしてしまう。
そんなものは聞きたくもないし、言いたくもない。
どちらの心も傷つき、汚れていくだけだ…
それを平気でやって
何とも思わない奴等が居るとしたら…
それがそいつの主義で、生き方なんだろう。
だとしても、私はそれを止める気はない。
全員が全員、バラバラだから…
今まで得た経験とか、
色々なものの積み重ねの上に成り立っているのが人格で
…人柄なんだ…
そんなに身勝手には生きられないし
生きたくないと考えて、そう思って行動しようとするのは
私の考えであって、全員が全員そうじゃない。
皆が皆、様々な種類の悲しみや苦しみを経験している。
それを乗り越えた上で、傷付けることを選んで
それに気付かずにやっているのだとしたら……
私は多分、黙って見ていられないと思う…
苦しんできたから、悲しんできたから
それで傷付けていいって理由にはならないし
誰もが程度は違えど
その感情と向き合って、必死に乗り越えて生きている。
逆に抱え込んで苦しくてどうしようもなくて…
それで間違った方向へ行こうとしているのなら…
それを助け出したい…
その闇から、救い出したい…」