第10章 大晦日&正月
その事実に対し
それに触れた時から、気付いたことがあった
ばん!!(恵土が机をたたく)
恵土「何で…
何で前から知ってたのに、今まで黙って!(怒」
林藤「お前のためだよ、恵土」
恵土「!」
前から、この情報があったこと。
そして、少しずつ与えていくことで
本来なら壊れるはずだった精神を
壊れないように考えた上でし続けてくれていたことだった。
顔を歪めながら叫ぶ恵土だったが
忍田「城戸さんが言っていた。
「あいつの子なら、おそらく
人の苦しみや不幸に苦しみ、涙を流し…
最後には壊れるほど、己を責め続けるだろう。
そういう奴だ…
あいつも妻も、その娘も…」
…かくいう私も、そう思った。
だから…」
恵土「私の…ために?」
林藤「俺もそう思った。
だから、少しずつ話すことに決まったんだよ」
恵土「…けれど…」
拳を強く握りしめ、爪が食い込む
血の代わりに、トリオンがにじみ出る…
それを見つめながら、思っていた…
城戸「…やはり、似ているな。
あいつも、お前も…
不器用ながらに、人を大事に思いやり過ぎる所も…」
恵土「私なんかのことで…
そんなに悩むことなんてないだろ…
私には、もう…身内もいない。
帰る場所もない。墓場も…全部消えた……
そんな私のために、考える必要なんてねぇだろ」
自虐的に言いながら、眉間にしわを寄せ
顔を歪ませながら無理やり笑おうとし、苦しそうに笑う。
林藤「そう言うなよ。
今は違う。そうだろ?」
恵土「そんなこと言うために…
わざわざ支部に呼んだのか?」
林藤「?」
恵土「私なんかは、いなけりゃよかっただろ!
最初から
この本部ぐらいしか受け入れる場所なんてなかった!!
住まわせてくれる場所もなかった!!
それでも煙たがられてた!
いきなり入隊パスされて、A級になったから…
受け入れる人もいなけりゃ
ソロでしかやっていけねぇような奴で!
父上や母上みたいに、慕える人間もいねぇで…(震え)
そんな自分なんか、元からいない方がよっぽど;(涙」