第46章 解禁
菊地原「それが余計に苦しませているんですか?
蘇った感情に伴って、余計にそれらが多くなって?」
恵土「…
そういう感じだな。
感情が蘇ってから、余計に敏感に感じ取れるようになった。
余計に考えて、それらが襲い来るイメージが染みつき過ぎて…
実際、一回キレてたろ?
我を失うくらい暴れて…
でも、結局は喜ばれたよな。
やっと、自分のために怒れるようになったんだなって。
…
けど、私にとっては…」
そういいながらベッドに座って起き上がってから
そのまま下へうつむき、ポツリポツリとつぶやいていった。
それを隣で、顔を見つめながら聴き入る中
絞り出される想いは、紡がれていく。
時には、彩を変えて…
不器用なそれを、聴き逃すまいと……
恵土「私にとっては
逆に辛い一方なんだ。
人混みに行けば、なおさらに感じ取れるようになっちまった。
それ所か…
その場にあった、残留思念だけじゃなく
それに伴っている感情とかまでも感じ取れるようになって……」
菊地原「?どういう意味で?」首を傾げる
恵土「もし、その残留思念が『恨めしい!』とすると
昔までなら
その言葉だけを無意識に感じ取っていた。
けれど、今なら
その言葉だけでなく、怒りや憎しみや恨み…
哀しみから経緯による深さまでも、感じ取ってしまうことになったんだ」
菊地原(ああ、深みが増したってことか)納得
恵土「…そんでもって、こう…
結構、ひどい何かまで感じ取ってしまって
感じないようにしていた。耐えられないから。
そのはずが、いっぺんに耐えられなくなっていって…
一気に、崩れていって…
死にたいって感情が、膨れ上がりそうになる。
感じたくもない、そんな感情も。
向き合いたくない、向き合った人の心も。
誰もが色々抱えて、生きている。
それなのに、勝手に視えちまうんだ。
視ないように意識しても聞こえて、感じ取ってしまう。
それらまで、感じ取ると…
それでも話せば、捌け口にしてるみたいで気分悪いし(ズーン」
そう思い悩んでいるのが見て取れるほど、肩を落としながら呟く恵土に対し
菊地原「そんなに気にすることないんじゃ?
相手は、自分には合わせてくれないものなんだから。
本来言わないと伝わらないもんなんだし」