第45章 呪い
何を呪いかと言うならば
それは、生きることそのものなのかもしれない。
それでも、それよりも勝るなにかは必ずある。
だからこそ、生きなければいけないのかもしれない。
時には、人のため(恵土の後姿が視える)
時には、自分のため…(俺の手の平を見つめる)
現実は、どこまでもシビアかもしれない。
それでも、それがあったからこその幸せがそこにはあった。
あの三人(三輪・三輪の姉・恵土)は
笑顔に包まれる中
ひしぃと抱き締め合い、涙を流し合っていた。
各々が感じる所があったのは、同じだった。
そう考える中、ふと恵土先輩を見ると
涙を流していた。
何のためか、何を感じたのか…
それは、伝わっては来なかった。
だが、それ以上に伝わってきて欲しくない時に
たくさんのものが伝わってきて…
たくさんの嫌な思いをしてきて
その積み重ねが、視える人々の闇や光までもが
あいつを苦しませていることだけは解っていた…
だから、俺は
風間「恵t
がしっ!!
風間「!」
呼びかけて抱き締めようとした時、その刹那
気を失っていたはずの三輪が突如俺の足を掴み、動きだし
ぎゅう!!
俺が動きを止めた中、三輪が恵土を抱き締めた。
視える、聴こえる、感じる
それらは時に、嫌なものを視させるかもしれない。
それらをどうにかできるかと言われれば、それはない。
だが、せめて…
何か力になれるとすれば、聴くことと寄り添うことぐらいで……
恵土「秀、次?」
秀次「…言ったろ、前にも。
…絶対に、離さない(ぎゅうう」
恵土「っ…
バカやろ…
あったかいな、本当…;(ぎゅっ」
そう言いながら強く抱き締める三輪を、恵土は抱き締めた。
どこか、哀しみに押しつぶされそうな中で
嬉しそうな表情を僅かに織り交ぜ、どこにも行かせまいとするかのように
その抱き締めてくる背を、しっかりと手で押さえながら……
それに慣れているかのように
抱き締める力を強めながら、顔を肩あたりにうずめ
そっとこすりつけるかのように、すり寄っているように見えた。
それは、幼い頃からずっと続いており…
抱き締め合って眠る時、いつもそうしていたことを後で教わった。
と同時に、一番落ち着くものなのだとも聴かされた…