第44章 ボーダーでの日々
そう言いながら後ろ頭をかいている姿は
必死に整理しようとしているように見えた。
そんな中、黙って微笑みながら聴き入っていた。
伝えようとする言葉を、小さい時に聴けなかった言葉を
今度は、きちんと聴こうとするかのように…
泣いていた時、そっとするようにしていた。
それだけしか、できなかった。
だから、今は……
恵土「…まあ、とにかくはだ…
お前も、こっちで色々と大変だか何だかあるだろうと思う。
それでも…
力になろうとする奴は、ここに居るし奪わせたりなんかはしない。
もし、近界民を全て殺すのがボーダーの責務だってのが覆らなくても
私が、近界に連れて行ってでも生かすよ。
反逆者呼ばわりされても、そのために力があるんだって思ってる。
自分にできる事なら、したいんだ。何でも…
見て見ぬ振りされて、殺されかける気持ちを知ってる。
傷付けられるのが当然で、全員から否定されて
いつまでも話すことも何もさせてもらえない気持ちを知っている。
誰にも受け入れられず、一人で生きてくしかなかった気持ちも解ってる。
だからこそ…
そんな想いを、人にはさせたくないんだ(真剣)
ただの自己満足かもしれない。
それでも…それを…
その乗り越えてきたもんを、無駄になんてさせたくない。
その時に味わった感情も、失っちゃいけない大事なものだ。
それがなければ、今は少し変わったものになってた。
きっと、そこまで力になろうと必死にはなれなかったかもしれない。
人という存在そのものを憎んで
それに同じ思いを味あわせる恐怖も同時に持ち合わせてて…
距離を取って、生きることを望んだ。
同じ思いなんて、味あわせたくなんかはなかった。
苦しみも哀しみも知っているからこそ、余計に…
でも…そんなに気にしなくてよかったんだ。
最近になって、やっと気付いた。
それで責任を感じて、謝られるとどう思うか…
(城戸司令に謝ってこられた時の感情が蘇る)
自分を庇って大切な人に死なれれば、どう思うのか…
(大切な人が目の前で死んでいった時の感情が蘇る)
……
どちらにしろ、その事態は避けられない事だって解った。
その想いは…
いずれにしろ、どこへ行っても一生付きまとうものだから」
そう目を伏せ、眉間にしわを寄せた。