第43章 飲み会(過去と今)
迅「?」
恵土「…お前はまだ、完全にいつでも視れるってわけじゃない。
制御し切れてるわけじゃないからな。
私も、最初はそうだった。
視界いっぱいに広がるそれが、ますます強まっていって…
それが、皆にも見えているもんだって思ってて……
でも、結局は違ってた。
信じて話しても信じられず、否定されて拒絶されて…
誰も、いなかった。
気が狂いそうにもなったよ(苦笑)
でもな…
一番、恵まれていたのは…
それでも、受け入れてくれる誰かがいるってことだ。
ありのままに受け止めてくれた、あっちでいう母や姉
こっちでいう父上や母上みたいにな…
それだけで、十分だった。
それだけで、何もいらなかった…
でも、もう失っちまったんだ(うつむく)
私がいて、トリオンが多過ぎて…
狙われて、全員殺されて村ごと壊されて奪われて……
けれど、お前は違うだろ?
友達や、他の何でもかんでも奪われたわけじゃない。
まだ、やり直しはいくらでもきく」
そう言いながら肩に手を置き
微笑んで、真剣な優しさを帯びた眼を向ける。
恵土「それにさ…
それ以前から、とっくの昔に決まってるんだ。
お前の、そのサイドエフェクトは
お前にしかない、たった一つの個性だ。
それで責任を感じることはない。
何かが得意だ、手先が器用だ、力が強い…
そういうので、負い目を感じる必要なんてないようにな^^
得意不得意があるように、その人にしかないものだってあるのは当然だ」
目を瞑りながら微笑み、立ち上がった。
恵土「これから別々の道を行くことになる。
それでも、どこかでまた交わっている。
前に土手で話した、川の流れのように…
どこかで繋がっては離れて、互いに影響し合っている。
だから、一人だけのせいになることはない。
だから迅…
私は、迅そのものと向き合って
こう思んだ(微笑」
そう言いながら、両頬に手を当てて優しく撫でた。
恵土「お前に会えて、本当によかった」
迅「!!」
恵土「同じように
視えないものが視えて、理解されないまま同じ扱いを受けてる人がいるって知れた。
一人だけじゃないんだって、解った。