第42章 飲み会(昔話)2
護りたいというだけで、それ以外は何もなかった…
それ以外、何も抱いてはいけない。
抱けば、殺される。ひどい目に遭わされて、当然と言われる。
理不尽な目に遭うのが普通、傷付いて喜ばれるのが普通。
何で、それがいきなり変わったんだ?
何で、真逆になったんだ?
何で、今更…
どうせなら、そのままの方がやり方はそのままでよかったはずなのに……
それを見て、やられて喜ばれるはずだったのに。
相手を大事に想うのは当たり前、護るのも当たり前。
でも、自分を大事に想ったり護るのは悪…
そうして、生きてきたはずなのにっ…;
それが、当たり前だったのに
何で…?」
気付けば、眉間にしわを寄せたままうつむいていた…
世間の当たり前とのずれ
それは
確実に恵土の心を苦しませ、むしばんでいるようにも見えた…
秀次「おい、恵土!」
恵土「!(はっ!」
秀次が
そんな肩を掴んで揺する中、ふと恵土は現実に戻った。
秀次「大丈夫か?瞳孔が開きかかって」
風間「顔色も悪い。横になるか?」
恵土「あ…(青ざめ」
そんな中、心配そうに話しかけてくる人たちがいた。
その恵土の顔は青ざめ、呼吸もまた荒れていた。
昔の情景と、理不尽の先にどんな目に遭ってきたかまで
その身に染み付いた恐怖や、自己否定までも全て……
誕生日に起こった事件までも、思い出したが故か…
未だに、無意識の内に出ていた震えが止まらぬまま……
恵土「…大丈夫。
大丈夫だよ^^;」
そう、震える声で呟きだした。
その顔は、笑っているようで笑えておらず…
いつものような、天真爛漫な笑みではなかった。
引きつったような、無理に笑おうとしているような笑み…
それは、痛切で痛々しいもののように感じていた…
菊地原(あ…)
そんな中、菊地原は気付いた。
誕生日会で、誰も来なかった時…
母親に、心配をかけまいと無理に笑った時と同じ顔だということに……
そんな中
気付いている人は、ここにもいた。
それまでの恵土にとって、悪であることを…
自分を大事にすることを、実行して欲しいと言い出した人が……
三上「いつまでも、そうやって蓋しないで下さい」
恵土「!」
それに三上を見つめる中
三上もまた、恵土を真っ直ぐに見つめていた。