第8章 神話
2日で5万ものトリオン兵を切り刻んだ
あの8歳の誕生日に起こった事件…
あれから…
あの日から…
虚しさと、哀しみと
どこにもぶつけられないような恨みと怒り、憎しみ…
そればかりが今日中で荒れ果て
その解決策も見つからず、ただただうつろに…
毎日を過ごし続けていた…
そのトリオン量と
あまりにも超高密度の質から狙われ続け
精神を壊そうとされ
利用するためだけに、必死だったのかもしれない…
瓦礫の中、何度うろうろしながらまわっても…
そこには、もう瓦礫しかなく
転がっている、見知った人たちの死体ばかり…
血の臭いがはびこり
自らの手も、トリオン兵についていた返り血がつき
血にまみれていた…
闇しかなく、襲い掛かろうとするものを
不眠不休で切り刻んでいく…
その地獄を生き抜くため…
その死体を、誰にも触れさせぬため…
一心不乱になっていた…
返り血で、白かった衣服が…
袴と着物が、赤黒く染まる
黒い気配と、刀をトリオン兵に突き刺したまま
トリオン兵を山積みにしたものの上で
次に現れるであろう敵を見据えようと、座っていた…
いつでも、斬りかかれるように…
そうして、有吾と出会い
ボーダーとして生きることを決めた…
そして、3月28日に近界に渡った。
あれから、半年しか経ってなかった。
しかし、人と言うのは何なのだろう…
有吾と共に渡り歩きながらも
何度も考え続けていた…
だが、そんな私を置いて
有吾は行ってしまった…
(後で知ったが
おそらく、遊真が生まれるからではとも考えた…)
それでも、それよりも…
それまでの出来事の方が、凄く重かった…
それをどう受け止め、どう背負い
無駄にしないか、無かったことにしないか…
それをどれだけ生かせるかが
本当に大事なのだということを…