第42章 飲み会(昔話)2
痛切な想いも、その願いも…
それは…
昔の自分へ向けてだったのかもしれない。
それでも、それが後に…
繋がっていった。人に味あわせたくないと……」
秀次「…(ふいっ」
そう語り続ける風間に、秀次は顔を逸らしていた。
解っていたはずだった。
恵土が言いたいことも、その想いも……
憎むべきは、殺した近界民自身であって
近界民全てではないのだということも…
風間「それから、決断したそうだ。
『有吾、私は殺せない。
家族が待ってる場所があるなら
仲間が待ってる場所があるなら、そこに帰したいっ;
その場所を奪う権利は、誰にもない;
余裕がなくても、奪っていいってことにはならない。
だから私は…
護るために、生きるよ;;』
有吾「そうか…
それが、お前の答えならそれでいい。
納得するのなら、その道を突き進め(微笑」
そう言って、頭を撫でてくれたと嬉しそうに笑っていた。
有吾「必死で考えた分
きっと、その道は誰にも譲れないものになる。
そして…いつか……
いつか、心の底から笑える日が来るだろう」
『城戸さんの方が、よく知っていた。
有吾とは、一回会ったきりでそれだけだった。
それでも、城戸さんが託すことを選んだのなら…
そうして有吾についていって
近界に行った経験は、無駄じゃなかった。
逆に行ってなかったら、きっと白帝を手に入れられなかった。
近界民を見て、怒りや憎しみや恨みとか…
そういうのが押さえられなくなった時、気絶させてくれた。
それから、たくさん考える時間を与えてくれた。
何のために生きるのか、何を見据えて生きるのか…
近界民全てが同じなわけじゃない。
でも、同じ人間なんだ。
争いもすれば、呼吸もする。
食べもすれば、眠りもする。
いがみ合ってはぶつかり合って…
おかげで、視野が一杯広がった。
同じような奴もいて、近界民を憎む人だっているってこと。
訪れた時、拒否されたり否定されたりもするってこと。
逆に温かく迎え入れる国もあって
襲われれば無論、護るために戦う国もあったってこと。
だから、近界民だからって
全員が全員、否定できるものじゃないって解った。
近界民に襲われた全員が
そういう考え方が出来ないのは、承知の上だ…
それでも、同じ痛みを味わう人を増やしたくない。