第42章 飲み会(昔話)2
それでも真っ直ぐに向き合おうと、相手に色々と気遣って
相手のために一生懸命考え続ける恵土先輩が、俺はいつしか好きになっていた。
それと同時に、『護りたい』という思いが膨らんでいった…
心だけじゃない。
体も…両方共に……
そう思うようになったのは、つい最近だった。
恋をしていると気付いてから
俺は、もう一つの世界の存在を教わった。
その世界では、この世界がアニメや漫画になったもので…
私がいるせいで、それとは違うことになっているとのことだった。
『幾多に世界は存在する』
そう言っていた兄の言葉から、その意味が解った。
人生を共有している。
そして同時に、辛い思いもまた
全て同じ意識として、向き合うことになっている。
視たくもないものが視えて、聴きたくもないものが聴こえて
感じたくないものも感じて…
ろくなもんじゃない。
実際、兄が成仏するまで視えて話せるようになってから
自身の主護霊や、あの世まで視えていて…
今までとは違った世界が視えて、聴こえて、感じられて…
その上
本当の気持ちか嘘かまで、面と向かってると伝わってきた。
その分、苦しんだり悩んだりが多くなった。
誰彼にでも悩みを打ち明けられるわけでもない。
視えてるものが違う。聞こえてるものも違う。感じているものも違う…
それらが、偏見や迫害や差別を生むことになる。
うっかり言おうものなら、変人扱いされ続け
気味悪がられたり、嫌なように言われ続けたりもする。
それらによって、非常に不快な思いをしてきたのも解った。
だが…俺は、恵土先輩そのものにはなれない。
話を聴いたり、相槌を打ったり
力になれることは、本当に少なかった。
それでも、悪口を言われて怒ったことが
本当に嬉しかったと、泣きながら本人の口から言われた時…
それを聴いた時、心から嬉しさがこみあげてきた。
できたことはある。
その能力が故か、苦しみがあることを敏感に感じ
だからこそ、感情をもらして
その辛さや苦しみが少しでも増えるのが嫌だったらしい。
それでも、安心して
信じて、想いをぶつけられるようになったのなら
これ以上嬉しいことはなくて…(微笑)
気付けば、笑いながら
『長生きして下さいね』
そう言いながら、俺は頭を撫でていた。