第41章 飲み会(昔話)
こんなに長々と話すの初めて見た。
そんな状況からか、誰も何も言えずに聴き入っていた。
二宮「これだってそうだ…」
そう言いながら、ふとチョコクッキーをつまんでかじる。
そして、断面を見ながら…
二宮「わざわざ中身を
ハートに見えるように、工夫して作っている。
人付き合いでも、自分から人に話しかけられなくなったくせに…
必死に努力を続けていられる。
生まれ持った才能はない。
あったとしても、不思議な力だけだ。
だが、あいつはそれに頼らない。
言い訳にせず、ここまでのし上がってきた。
その道は平坦などではなかったはずだ。
不思議な力を使えることから
偏見や迫害などの様々な障害が降りかかり続け
そんな中でも、父と母が
笑顔で温かく受け入れてくれることだけが、何よりの救いだった。
8歳の誕生日、夕方まで来ないように言われ
その間に近界民によって村ごと全て奪われ、殺され
降りてきた時に見たのは…
村人も全て殺され、村も壊された所だった……
3月22日の朝まで、近界民に殺そうとされ続け
極限状態で、ずっと暴れ続けていたそうだ…
8歳から
ボーダーに入るまでの11歳10か月まで近界を渡り歩き
その間もずっと戦術を磨いて、生き抜き続け…
行く先々で拒絶されたり、利用されたり…
あまつさえ、実験台のようなものをさせられ
モルモットのような扱いを受け続け、大変だったらしい……
それでも、あいつは変わらなかった。
無意識の内に、身体が勝手に自身を護ろうとするようになったが…
その痛みと今も戦い続けている。
決して漏らさず、ぶつけず…
誰も、辛い思いをしないようにしっかり踏みしめている…
俺は、才能のない人間は嫌いだ。
だが、その中でも
それを言い訳にして努力を怠り
平然としていられる奴はもっと嫌いだ。
しかし…恵土は別だ。
あいつは、どんなに才能が無くても
要領が悪くて踏んだり蹴ったりでも、全く弱音を吐かない。
逆にそれを力に変えようと
二度と繰り返すまいと、努力し続ける奴だ。
それが、大事なことなのだと気付かせてもらった。
だから俺は…」
そう紡がれる想い…
それは、昔から抱いていたものだった
(3月5日AM11:13~PM12:56更新、1521~1527(7ページ))