第41章 飲み会(昔話)
『死んだ、時?』
恵土「というと語弊があるかな。
意識が戻ってから、城戸さんと話した。
奥さんと娘さんが殺されて、近界民はどうあっても許せない。
ましてや…
親友の子…私を失いかけたからって……
それが要因で額に傷を負ったってのに
全く気にもしてねえんだ。
私も私で、その時に負った傷を気にしちゃいないが…
城戸さんの戸籍に入らないか誘われた。
義父みたいなもんになろうとしててな。
奥さんや娘さんとも仲良くいてもらってたのもあったから……
(遠い目で窓の外を見つめて微笑む)
でも…(うつむく)
結局は断った。
城戸さんには、私なんていう枷もなく
自由な恋愛をして、幸せになって欲しかったから(微笑)
でもって、再び死んだってのは…
その、殺されたって事実を受け入れられなくてっていう話だ。
共に乗り越えたあの夜の出来事…
それは、その当時に負った『体と心の傷』と
城戸さんの顔に今も残る傷で、苦しみあがいていたことだ。
『また、私のせいで』
『私が読み違えた。
勝手な憶測で言って、それで危険な目に遭わせた』
『私も護れなかった』
『親友の頼みを、護ることを実現し切れなかった』
そういった考えが、次々に浮かんではぶつけ合っていた。
あの出来事から
近界民に関しては、最初から全部信じ切ることはしないようになった。
万が一のことがあれば、自動で動くようにしていた。
それまでなら、近界民に対してでも油断し切ってて
何が起こっても防御なんてせず、ありのままに受け入れるって感じだった。
そういう意味で、死んだんだ。
そっちの方でのトリガーは
生身に対しても斬れるし、殺すことができるから。
そういったことはしたくないから
生身に対しては気絶するほどの痛みが流れる程度ってだけにしたって感じで…
本当に、色々あったなあ」
一息つきながら、そう言ってから
酒が入ったグラスをゆらゆらと動かし、最後の一口を飲んだ。
太刀川「まあ生きてりゃ色々あるよなあ」
そんな時、ボトルをもって
そんな恵土の隣に座って、グラスに酒をついだ。
恵土「っと。ありがと」
太刀川「世話になってばっかだったしな。
こちとら、出会った直後に近界民に護られた
勉強でも追試でも再試でもレポートでも護られてばっかだし(苦笑」