第8章 神話
恵土「…
有吾と別れてから、次の近界に渡った時…
それが、アフトクラトルだった。
小さかったけど
その私のことを覚えられていたんだ。
半年も前、私の村を襲い
トリオン器官を根こそぎ奪っていった奴等が…」
そして瞼を閉じると
脳裏に浮かんでいた…
初めて、ホワイトトリガーを手にしたあの時…
怒る理由も、悲しむのも
どう感じるのかっていうのでさえも
人によっては違って…
全く同じことなんてなくて…
善悪の基準もラインも
その人たち次第だっていうことも…
2015年12月24日から
16年3か月前…
1999年9月24日
アフトクラトル
恵土「…」
幼いながらも、雰囲気が悪いことに気付いた…
というのも、紛争中だったから…
奪ったトリオンがあまりに大きく
その所有権をめぐってのことだった
恵土「くだらない…
何で、そんなことで
あんなに血眼になって争い合えるんだろう…
大切な何かが、消えていくだけなのに…」
遠い目をしながら、俯く…
遠いあの日、全てを失った
あの時を思い返しながら…
そんな折、斬りかかってくる人たちが現れ…
それを防ぐ。
ガキィン!!
刃と刃が交わり、弾き返す。
「ん?こいつ」
「どうした?」
「いや…
ああ!あの夫婦の子供だ!
写真に写ってた、もう一人の方!
いやぁ~。
おかしいとは思ってたんだよなぁ…
一人だけ、数が足りなかったからよぉ。
そのせいで俺は責められるわで散々だったわ」
そう肩をすくめながら言う人に対し
恵土は、ただただあっけにとられ
頭の中が真っ白になっていた…
「ん?なんだ。
ただの生き残りが
わざわざこっちに来たってことか」
「そうらしいな。
殺した国の兵たちが、ここだのものとも知らずに…」
そう言い合いながら
見下すように見下ろす男たちに対し…
恵土「…」
暗い表情をしながら、睨み据えていた…