第39章 終わらない悪夢、忍び寄る闇
恵土「それを受け入れてくれる人にとっては
そんなに気にしなくてよくても
私にとっては本当にありがたくて仕方ない上に嬉しくてどうしようもなくて
ありがとうってばかりになっているけど、嬉しくてたまらなくて…
いじめられていた時でも今でも、人が楽しそうに賑やかに笑ってるのは好きで
でも、それで笑ったらいけないって環境だったから
私がいたら、それを見たら不機嫌な顔をされるから
自分自身が邪魔なのにとか思ってた。
生きて欲しいって願われた時、死んでいく夢を見た時…
相手のためだって、自分の体や心のことを何も考えずに頑張ってきたことが
その積み重ねが間違いだったって、間違ってたことさえも気付かなかった。
さっき言ってたのが日常だったから
合わせてもらうのも、
聴いてもらうのも、話に付き合ってもらうのも、
人に触れるのも、それに甘えさせてもらうのも初めてのことで
意味のない命はないって…
気にしなくていいって言われた時、嬉しかった。
呪いだか何だか、そんなの気にしないって人いなかったし
否定するよりも、お前は受け入れてくれた」
秀次「本気でそう思ってたからな」
そう言いながら
車の中で重ねてこられた手を、秀次は握り締めていた。
小さい時、何度もそうやって受け入れてもらったように
そうやって、
恵土「…
誰もが満足するような答えは、きっと出てこないと思うんだ。
たった一人で考えても、それは一人の視野にしかすぎないから。
全員の視野なんて、私には見えないから。
でも…
勝手に決めつけて、相手のためになるって思って頑張ってた。
それが間違いだって気づいて、否定された気になってたんだと思う。
それと向き合うのが怖くて、きっと脳は過剰に反応したんだと思う。
違う方に意識を向けようとして、違うことを必死に考え続けてたんだ、きっと。
そうじゃなきゃ…
何年もの時を、そうすることで耐えてきたのか解らないから。
でも、もうとっくに報われてたんだ。
仲間がいる。友達がいる。血が繋がって無くても、家族がいる。
十二分に恵まれてたはずなのに
何度だって、悪夢がよみがえっていた。
その理由、今になってやっとわかったよ」