第39章 終わらない悪夢、忍び寄る闇
そう、俺を見下ろしながら迅は言っていた。
恵土「迅!
やめろ、言い過ぎだ」
恵土はそういうが、俺は黙って引くことなんて出来なかった。
姉さんを失った矢先だったから…
秀次「赤の他人のお前に何が解る!!??
姉さんを失って、何のかかわりのないお前にとやかく言われる筋合いはない!!」
迅「関わりならあるさ。
俺にとって、恵土は恩人だ。
そいつが悲しんで、自殺するようなほど辛い思いをさせるのは御免だ。
だが…
それで何も出来ずに自殺されるのは、もっと御免なんだ(黒睨」
そう迅へ叫んだ俺に、迅は答えた。
その声は、低くくぐもっていて
その目は、どこまでも鋭くとがっているように感じた。
秀次「!!」
それに俺は、思わず後ろに下がっていた。
じりっ
それに、迅が歩み寄り続けた。
恵土「迅!!」
迅「!!」
それに恵土は間に入って、迅に呼びかけた。
俺を抱き締めて、迅を見えないようにしながら…
秀次「!!」
恵土「もうよせ。
解るだろ?失った時の気持ちのこと…
お前の気持ちも解る。
でも、頼む……
今は、そっとしておいてくれ(お辞儀」
秀次「…恵土」
護ろうとしてくれている事だけは
当時、混乱した俺の頭でも、はっきりと解った。
迅「…解った。
悪かったな、秀次。
でも、お前が死ぬと哀しむんだ。
恵土は、姉さんを失ったことも悔やんで悲しんでいる。
すぐ傍にいたお前にとっては、もっとかもしれない。
それでも…
今まで恵土は、たくさんのものを失ってきた。
家族も、友人も、仲間も…全員をな。
……
だから、秀次…
泣くなとは言わない。叫ぶなとも言わない。
でも…頼むから……
恵土を、これ以上哀しませないでやってくれ」
そう、苦しそうな顔をしながら呟いた。
迅「きっと…
姉さんが苦しめば、お前も苦しむ。
それと同じように
秀次が苦しめば、姉さんも苦しい。
…同じなんだよ。
恵土は、誰よりもそれを敏感に感じてしまう。
そして押しつぶされやすいタイプなんだ。
長年付き合っていたお前なら、きっと解るはずだ」
そう言いながら、迅は背を向けて歩き出そうとしていた。
その時、混乱した頭でも解って、伝わっていた。
恵土の幸せを、本気で望んでいたことを…