第37章 祝勝会(変わらぬ過去、変わらぬ想い)
母さんが死んで、家も無くなった…
その時であっても、俺の目には…
視たくもない、周囲の人の未来が次々に視えていた。
この能力が憎くて仕方なくなった。
嫌いだって、思うようにもなるはずだった…
けれど、恵土が変えてくれた。
母さんに会わせてくれた。
幻覚なんかじゃない。本物に…
触れさせてくれた。
生きていた時と同じように触れて、話をさせてくれた。
その姿を、目に見えるように見させてくれた…
そして、遺産目当てに欲のくらんだ連中から護って
居場所がなかった俺に、居場所を与えてくれた。
玉狛支部で一緒に笑っていた。
誕生日を祝われたり、かまくらや雪合戦やチョコづくりやら…
色んなことを、たくさん一緒にして…
本当に幸せで一杯だって、感じるようになっていた。
それからだった。
母さんが殺される悪夢を見て、恐怖を感じた。
もう、何も視えなくていい。
そう、目を潰そうとまで思い悩んでいた。
あの時、その思いまでもが蘇って…
本当に怖くなったんだ。
受け入れてくれた所に帰るのも
居場所だって、認めることさえもが…
(717ページ参照)
そうして、川のほとり(土手)のくさっぱらで
一人で座っていたはずだった…
その隣に座りながら、恵土は優しく諭してくれた。
居場所は、自分が決める場所であること。
相手を理解するためには、ぶつかるしかないこと。
そして…受け入れる人が、ここにいること。
居場所は、いつでもここにあるってこと。
いつでも受け入れるってことを、態度で示してくれた。
近界民を憎みそうになっていた思いまで、和らげてくれた…
それと同時に、本当に楽しかった思い出まで
いつまでも、頭の中で一杯になって…
その中に、大切に想ってくれる想いがあるって解ったんだ。
「迅^^」
そう、愛おし気な声で、目で…
母さん以外にも…父さん以外にもいたって、やっとわかったんだ…
求めてくれる人は、すぐ傍にいるって…
それだけで、本当にすっごく幸せだって。
頭を撫でられて、優しく微笑みかけられて…
もう両親もいない。元々友達もいない…
それでも…
恵土「帰ろう、迅^^」
その一言だけで、差し伸べられる手で
あっという間に、悩みも全部吹き飛んだんだ……