第37章 祝勝会(変わらぬ過去、変わらぬ想い)
病院、会計前
恵土『城戸さん…
やっぱり、鳩原さんたちを探しに行った方が』
城戸『気にするな。
お前はもう、7か月も探し続けただろう?
合間に戻ってくることはあったにしろ、285か国も回った。
そんなに気にするほどのことはない。
第一、それ以上のものをお前は手にして戻ってきている』
恵土「…
『でも、近界における技術を一つ一つ提供してもらった程度で』」
城戸『それが無くてはかなわないこともある。
気に病むな。お前のせいではない』
恵土「…『すみません』」
城戸『そのようなことを言うな。
…それに、謝るのは私の方だ。
お前に、12年前に重荷を背負わせてしまったこと…
今でも忘れてはいない』
恵土「………」
その言葉に、押し黙ったまま拳を握りしめていた。
城戸『今はゆっくり休め。
お前ばかりが気負う必要もない。
安心して、休養に努めろ。
それが、今のお前にできる最大の責務だと思え』
恵土「…『解りました』」
病院において会計を払うまで待っている際に
ベンチに座って目を瞑ったままテレパシーで話しており
最後の言葉を伝えてから切った。
その頃、本部では
忍田が入室した所で、その内容も聞こえていた。
城戸「溜息)はあ…」
忍田「…城戸司令」
城戸「ピクッ)聴いていたか」
忍田「…あの件に関しては、私も」
城戸「気にするな。
たとえ失ったものが大きなものであろうが、近界民には関係のないことだ。
でなければ…あんなことにはならなかった」
椅子に座ったまま、両手を組みながら呟く中
忍田「……」
忍田は、その当時の出来事を思い出していた…
城戸「あれからもう、12年…
我々がこうなった始まりは…もう、恵土と我々以外は知らない。
そしてこれからもだ。
(ボーダーの黒い立方体のマークを背に呟く)
子供が想像するよりも、この世界は残酷だ…
それは、今も変わらないということを肝に銘じておけ。
大丈夫だと思ってかかれば食われるのがオチだ…
あの時のようにな(ぎゅうっ!」
目を瞑って頭の傷跡を指で触り
『あれからもう、12年…』と重々しく呟き
両手を組んでから、それ以降のを語り出した。
最後の一言と共に、握り合わせる力を強めながら…
遠き昔の、始まりの日の出来事…
それが語られるのは、もう少し先だった……