第37章 祝勝会(変わらぬ過去、変わらぬ想い)
いつもなら、こんなにたくさんしゃべらない…
少なくとも、風間隊以外と二人きりで話すことは滅多にない。
その菊地原の様子から、そう読み取る木虎だった。
小南「というより、何なのよ!
ろくに知りもしない奴らが好き勝手恵土のことほざいて!(ぷんぷん」
レイジ「人というのは好き勝手に言うものだ。
口を開けば、目についた悪い所をひたすらにあげて卑下するような人だっている。
誰もが味方して、理解してくれるわけでもない」
小南「だからって!」
異論を唱えようと叫ぼうとする口の前に手を出して、発言を抑えた。
病院で静かにしないといけないような場所だから
レイジ「…恵土にとっては
理解しようともせず、表面しか見ようともしない奴等よりも
俺たちのように、理解した上で共に居ようとする奴等が居れば
それでいいと笑うはずだ」
小南「でも…」
東「悔しいのも解る。俺も同じ口だ」
小南「え!?東さんが?」
東「話し合ったことも
一緒にいたこともない人たちに好きに言われる。
それを聞いていながら
誰にも愚痴をこぼさず、相談もせず…
ずっと無茶ばかりして、死にかけたことだってあった…
それでも、理解されない方が多い。
どれほど必死になろうが、見ていない人は見ていない。
そういうものは見ないくせ、悪い所だけを列挙するばかりだ。
取り立てていい所もない。
そう批判され、自分の悪口は何とも思わないくせ
人の悪口に関しては、誰よりも激怒して謝るよう強要する。
あんな性格だから、誤解されがちなのも解る。
実質、アスペルガー症候群らしく
普通の人たちの中にいれば、否が応でも目立つことになる。
それでも…
俺にとっては、そんな中でも真っ直ぐに生きてきたことの方が敬意に値すると思っている。
普通なら、それに屈して悪口を言ったりもするだろう。
愚痴を言って、ののしって同意するのを望んだりもするだろう。
だが、あの人の場合は
そうされる側の痛みを、誰よりも知っている。
だからこそ、それを自分自身に許せないし
人には、知らない人ならば『程々に』と注意する程度だ。
人が話し、相談などで話してくるのは許すくせ
それでもそういうことを人にしないのは、それだけ大事に想っている証だと思っている。
そして…
誰にでもマネできるようなものではないとも」